鉄道というと、2本のレールの上を列車が走る絵をイメージする人が多いだろう。
大井川鉄道井川線は前身が森林鉄道ということもあり、大井川の流れに沿って遡上するように走っている。そのため勾配が急な区間も多く、日本一の急こう配(90‰ 1kmあたり90m登る)をクリアしなければならない。そのため、井川線では全国でも珍しいアプト式を一部区間で採用している。アプト式とはレールの間にピニオンラックを設置し、ラックを歯車に噛ませることで線路との粘着力を高める方式だ。そんな、変わった鉄道に乗りに静岡へと向かった。
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今回は、アプト式の井川線に乗車することを目的としていたため、静岡からレンタカーで井川線の始発である千頭駅へ直行した。
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千頭駅は大井川線と井川線の接続駅となっている。
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たまたま、大井川線はSLの発着時刻と重なっていたこともあり多くの人でにぎわっていた。大井川鉄道は、地方私鉄のSLブームの先駆けのような存在で、1970年代からSLの動態保存、保全に携わっている事業者である。
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井川線は、もともと電力会社がダム建設時に建設資材を運ぶために軽便鉄道(762㎜)を開業させ、それを後に1067㎜に改軌したものであるため、車両も通常の車両に比べて一回りも二回りも小さい。流石に頭が天井にあたることは無いものの少々窮屈に感じた。
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列車は川根の街並みを抜けると大井川を遡上するように列車は上っていく。
東海道新幹線に乗っていると、静岡県内は安倍川、大井川、天竜川の3河川とも水量が豊富で、長い橋梁を渡るイメージがあるが、上流域は平地が全くなく急流なのだなと思わせられる。
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アプトいちしろ駅では急勾配を上るため、アプト式に対応した機関車を更に連結、長時間停車する。
機関車の補機はアプトいちしろ駅と長島ダム駅までの2駅、約2.7kmの間をピストン運用されており、長島ダム駅でも機関車の解放のため停車時間がある。
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ホームにて。客車のスケールが改めて小さいことがわかるだろうか。千頭駅が海抜299mに位置しているため、すでに100m近く登っている。
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車窓から見渡すことができる長島ダム。長島ダムは大井川の最下流域の牧ノ原台地の灌漑事業に一役買っているそうだ。治水事業が特産品の日本茶の生産にもまわりまわって役に立っているということをここにきて知る。
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アプト式がわかるように連結面から写真を撮ってみた。レールとレールの間にアプト(チェーン)が設置されている。ここを補機がアプトを用いて勾配を登っているのだ。
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車窓はひらんだ駅を抜けると長島ダムのダム湖を映し出す。
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奥大井湖上駅は、長島ダムのダム湖に設置された駅で、秘境駅の一つとして知られている。
現在はハイキングロードの整備や「奥大井恋錠」駅といって恋錠を駅に設置できる企画切符が発売されており、駅は列車の本数に比してにぎわっていた。
(参考 公式サイト *外部サイトに飛びます)
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ダム湖の西側には旧線をちらりと見ることができる。写真下の方が旧線である。
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接阻峡温泉駅に到着。2017年2月当時、土砂崩れもあり接岨峡温泉~井川が不通になっていたため、ここで乗客は降りていく。
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駅から不通区間(閑蔵駅方向)をむいて一枚。折角なので折り返し時間を利用して温泉へ向かう。
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今回利用したのは接岨峡温泉会館接阻の湯 駅から5分と至近なうえ400円とリーズナブルだ。
(参考 公式サイト *外部サイトに飛びます)
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折り返し準備を行う千頭行きの列車に乗り込み、元来た道を戻った。

おまけ
折角レンタカーで来ているので、不通区間の終着駅、井川駅とその先にある井川ダムを探訪した。
井川線でたどった道のりを県道368号線をたどり遡上していく。
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アプト式機関車を連結した井川線を道路から。改めて、機関車と客車の大きさの差がみてとれる。
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日暮れ間近の井川駅。 営業していないためひっそりとしている。
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井川ダム こちらは治水ダムで、現在は中部電力が管理している。中部電力の前身である会社が井川線を開業したこともあり、現在も井川線の施設管理や赤字補填について、ダム湖周辺住民の利便を図るため中部電力は深くかかわっている。

(追記)
井川駅から井川ダムへ車を向かわせる途中、道を間違え井川の集落に出たのだが、写真を撮り損ねたのを今更ながらに反省…。

(このページの作成者 てら)